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第一話 盲目のデュエリスト


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 アキラが車にはねられたのは、夏休みに入る少し前のことだった。
 電話でそのことをオレに伝えた母親の声は、意外にも落ち着いていて、淡々としていた。信号のない、見通しもわるい交差点で、一時停止標識を無視して左折してきた車が、下校途中だったアキラの自転車の後輪を巻き込んだ。すぐに救急車で病院に運ばれたが、いまだ意識は戻っていない。運転手は全面的に非を認めているという――母の声で語られる事故の概要はまるで異国の言葉のように現実味がなく、すんなりと理解できなかった。
 アキラ。三つ年下で、まだ中学一年生である。生意気だがたった一人の弟だ。容態を訊ねると、受話器の向こうでオレを大人として扱うべきか子どもとしてみるべきかを逡巡する気配があり、「状況が状況だから、まだなんとも」という答が返ってきた。
 実際には軽度の骨折で済んだ。頭を打っていたので後遺症が懸念されたが、もう心配ない――と二度目の電話で聞かされた。
 うって変わって饒舌になった母は、あの子は普段から注意が足りないだの寿命が縮んだだのさんざんこぼしたあと、念のため入院させることを告げて電話を切った。
 入院生活はオレも経験がある。二年ほど前のことだ。光のいたずらでリノリウムの床に撒き散らされた水に気づかず、盛大に足を滑らせて階段を転げ落ちた。さいわい打撲と捻挫で済んだのだが、心配性の母親が断固として検査入院を主張し、一週間ほど何もない病室に放り込まれた。寝返りもうてない硬いベッド。味の薄い食事。まるで監獄だった。
「まるで監獄」
 アキラも同じ感想を抱いたようで、入院してから一日と経たないうち、電話を掛けてきてそういった。
「することなーんもねえの。暇で死にそう」
「安心しろ、退屈で死んだ奴はまだいない」
 軽口を叩くと、アキラは「そりゃそぉだけどさぁ」と夏休みの宿題は毎日コツコツやらなければならないといった類のことを聞かされたような不満声をあげたが、あとで見舞いに行ってやるからというと途端に声を弾ませた。
「なぁ、デュエルディスク持ってきて。ここでデュエルしようぜ」
「病院ってその手の機械の使用は禁止されてなかったか? ケータイもそうだし」
「ここは大丈夫。ケータイも大丈夫な棟だし、看護師さんにも確認をとったから問題ない」
 用意のいいことだ。はじめからそのつもりで電話してきたらしい。
「いやでも……そうだ、デッキをどこにしまったか憶えてないんだ。別のゲームにしないか? なんなら漫画でも買っていってやろうか?」
「あ、勝ち逃げしようとしてるだろ? デッキの在り処なら知ってるぜ。机の一番上のひきだしの、鍵のかかってるほう」
 オレは舌打ちしたくなるのをどうにか我慢した。
「お前、また人の部屋に勝手に」
「ベッドの下で見つけたものは、母さんには内緒にしとく」
「……デュエルディスクだけでいいんだな? ほかに注文は?」
 アキラは入院患者とは思えない元気な声になった。
「最高のデュエリスト、一名!」

 今やM&W(マジック・アンド・ウィザーズ)を知らない人は少ないと思うが、念のため説明しておこう。平日の深夜や日曜の早朝に民放をつけると、見たこともないような凶悪な顔をした怪物や、中世の英雄に扮した人間の立体映像が映っているのを眼にしたことがあると思う。よく見るとモンスターの後ろにはそれぞれトランプみたいなカードを手にした人が、しかつめらしい顔をしながら立っており、ときどき「ドロー」だの「召喚」だのわけのわからない単語を発している。これがM&Wという、いまやサッカーやバスケットボールに劣らぬ世界的人気を誇るカードゲームだ。
 人気のわりに歴史は浅い。夭逝したアメリカの画家が、約十年前に創りだした。最初はエジプト神話のみをモチーフにしていたが、現在は古今東西の神や悪魔から、アメコミの主役までなんでもござれだ。プレイヤーはそれぞれ魔法使いに扮し、デッキと呼ばれる40枚のカードの束から、モンスターを召喚したり魔法を使ったりして擬似生命を削りあう。これを決闘(デュエル)と呼ぶ。プレイヤーはデュエリストと呼ばれ、プロ制度もある。アキラはことあるごとにプロのデュエリストになるのだと言って両親の困惑を買っているが、それは儚い夢に終わりそうだ。相手を乞われてしぶしぶルールを覚えたオレに、一度も勝ったことがないのだから。
 かくいうオレは、デュエリストでもなんでもない。名前は美作ミドリ。府秦高校ボランティア部に所属し、成績は平均的で、彼女はおらず、ベッドの下に母親に見られたらまずいものを隠している、ごく健全な男子高校生である。


 羽住大学付属病院は三つの棟からなり、ひとつは去年改築工事が終わったばかりだった。自動ドアをくぐると中途半端な冷気が漏れだし、照り返しであぶり焼きになった身体を冷却してくれた。覚悟していた消毒液の臭いは皆無に近かった。しばらくロビーの長椅子にもたれて汗を引かせながら、院内地図を確認する。入院患者がいるのは新しくなった棟のようだ。202号室。アキラはわかりにくい場所にあると言っていたが、意外と簡単に見つかった。
 ドアの前に立ち、ノックしようとしたが思いとどまった。さっきのお返しだ。少し驚かせてやろう。
 オレは「最高のデュエリストが来てやったぞ」と呼びかけながらドアを開け――
 そこで時間が停止した。
「ど、どなたですか?」
 困惑気味に誰何したのは、ベッドの上の「少女」。オレがいきなりドアを開けたせいか、わるい魔法使いに見つかったお姫様のように、シーツを抱きしめて肩を震わせている。どなたですかとはむしろオレが訊きたい。男子中学生のベッドにもぐりこんでる君こそ誰ですか。
「ええと、美作ミドリと申しますが――君は?」
 少女は答えない。意志の強そうな二重瞼でじっとこちらをうかがっている。やや剣呑な眼差しは見覚えがあると思ったが、誰とは思い出せなかった。おそらくアキラと同年代だろう。彼が家に連れてきた友人の中に、もしかしたら同じ顔があったかもしれない。つややかな黒髪を耳のあたりで切りそろえた髪型は、古風な日本人形のような清廉さがある。病的なほど白い顔の上に咲いた、厚ぼったい唇の赤さが印象的だった。
 ふと視線をずらすと、習字の練習でもできそうな真っ白なシーツの上に、少女の手からこぼれ落ちたらしい数枚のカードが散らばっていた。傍らにはデュエルディスクもある。するとこの少女もデュエリストか。そう考えつくや否や、ろうそくの火を吹き消すように、自分の中からある種の感情が消えるのがわかった。
「困ったな。ここはアキラ――美作アキラの病室でしょ? 君は、アキラのデュエル友達?」
 迷子を諭すような口調で言いつつ、オレは部屋に視線をさまよわせた。部屋はいかにも病室らしい、淡いクリーム色の壁紙を使った、こじんまりとした個室だった。ベッドはひとつ。いくつかのベッドがカーテンで仕切られているさまを予想していたオレは、内心驚いた。うちの両親も、短期入院とはいえずいぶん豪儀なことをしたものだ。
「――あの」
 対面以来、初めて少女が口を開いた。見目かたちとは裏腹にややハスキーな声で、彼女はこういった。
「部屋違いだと思いますよ」
「202号室ですよね、ここ?」
 ちゃんと部屋に入る前に確認した。
「そうですけど、202号室はここだけじゃなくて、B棟やC棟にもありますよ」
「B棟」
 呟いて、ゆっくりその意味を咀嚼する。自分の犯した間違いも。先入観を取り払ってみれば、少女は入院患者以外の何者でもなかった。薄手のカーディガンの下にクマさん柄のパジャマを着込んでおり、その手首には、入院患者の病状などが書かれたピンク色の腕輪があった。
「棟を間違えたみたいです。失礼しました」
 頭を垂れ、そそくさときびすを返した。ドアに手をかけたときだった。
「あのっ! “最高のデュエリスト”さん!」
 背中に投げつけられた声は、馬鹿にしている響きではなかった。振り返る。枕頭台に片手を置いて、少女は親に見捨てられたような顔で身を乗り出していた。いまにもバランスを崩して転げ落ちそうな危なっかしい姿勢。オレが返事をする前に、彼女は続けた。
「あたしと、デュエルしてくれませんか?」
「………………は?」
 状況にまったくそぐわない少女の言葉に、オレの思考は完全にフリーズした。


「慣れてますね」
 そう言った少女の視線はオレの手元あたりに注がれていた。デッキシャッフルのことらしい。
「そうですか?」
 トランプで遊んだことしかない人よりは速いと思うが、もっと素早くカードを切る人はいくらでもいる。そう言うと、
「でも、こんなに静かにシャッフルできる人はなかなかいませんよ。カード、お好きなんですね」
 オレは黙ってカードを切り続けたので、ひととき完全な無音が病室を支配した。彼女のシャッフルは実にゆっくりしたものだった。不慣れというより、カードを傷つけないように細心の注意を払っているように見える。
 M&Wで他人の相手をするのは、アキラ以外ではこれが初めてだった。デュエルを申し込まれたのは初めてではなかったが、ずっと断ってきた。カードショップをうろついていると声をかけてくる面々には親に手を引かれているような幼い子どももいたし、オレの両親とそう変わらない壮齢もいた。男も女もいた。丁寧な申し込みもあれば粗暴な挑戦もあった。仮に彼らがこの場にいて、いったいこの少女と自分たちの何が違うのかと訊かれたとしても、オレにもよく分からないと答えるしかない。
 ただ――。
「もちろん今すぐデュエルしてほしいってわけじゃなくて。その、いつか暇ができたらでいいんですけど……だめですか?」
 意外すぎる申し出に凍りついたオレの沈黙を、辞退の意と受け取ったらしく、少女は恥ずかしそうに口ごもった。
「本当に、いつでもいいんです。あたし当分ここから動けないし、友達もいないし、ずっと暇ですから……ごめんなさい。いきなりこんな話しても、ご迷惑ですよね」
「オレ、は……」
 本当はデュエリストでもなんでもない。カードに触るのすらひさしぶり。そう言い訳したくなるのを、寸前でこらえた。入院生活の辛さは身にしみて知っている。退屈は引き伸ばされた鈍痛だ。寂寥は終わらない不安だ。なにもすることがなく一人きりで寝ているというのは、ガムテープで毛を剥がすような鈍磨な痛みを延々と繰り返すことに似ている。
 迷ったのは一瞬だった。オレは道化師がやるように右手を心臓の上において、「あなたさえよければ、今からでも」と笑いかけた。よほど嬉しかったのか、彼女はいきおいよく「お願いします!」と頭をさげた。ショートヘアが跳ね上がり、あたりにシャンプーの芳香が漂った。笑った顔はまるで天使だった――とオレが連想したのは、彼女の頭にごく細い銀の輪が見えたからだ。キューティクルの反射を天使のリングと喩えることがあるが、黒髪の隙間から見えるのは本物の輪っかだった。女子中学生のあいだで流行っているアクセサリーだろうか。
 オレはアキラのことを説明し、「ちょっと待ってて。すぐ戻る」といったん病室の外に出た。はたしてB棟の202号室にいた我が弟に事情を聞かせ、二人で来た道を引き返す。少女は既にデッキをセットして待っていた。
 改めて自己紹介を交わし(こいつが弟のアキラ。あ、オレはミドリ。二人とも美作だとややこしいから、名前で呼んでくれる?)(城ヶ崎亜理紗です。よろしくお願いします、ミドリさん、アキラさん)デュエルディスクを取り出した。決闘盤(デュエルディスク)というのは国内屈指の大企業KCが誇るM&Wのタイアップ商品で、カードの画像を立体映像化し、臨場感を高めるためのハードだ。端末としても優秀で、立体ムービーの再生から近場のデートスポット検索まで一通りの機能は揃っている。それなりに最新技術が盛り込まれており、二台もあれば最新のパソコン一式が揃うくらいの値段はする。アキラはお年玉で買ったが、オレは懸賞に応募したら当たった。
 オレは左利きなので、デュエルディスクは右腕に嵌められるよう部品を交換してある。亜理紗のほうを見ると、彼女のデュエルディスクは四本の足を生やしたテーブル型に生まれ変わっていた。互いの認識コードを設定した後、彼女は細いUSBコネクタを取り出し、デュエルディスクに差し込んだ。初めて見るものだったので、オレは訊いてみた。「なに、それ?」
「あ、これですか? 声でカードを読み上げてくれるんです」亜理紗は頭の輪っかを指さした。「ここがスピーカーになってて。あたしゼンモウだから、これがないとカードがわからないんです」
 ゼンモウ、が頭の中で全盲に変換されるまで、きっかり二秒かかった。それから全盲=眼が見えない、と繋がるまでさらに一秒。
「そっかー。大変だね」
 馬鹿みたいなおざなりをアキラが言う。オレはといえば同じせりふしか思いつかなかったので黙っていた。どんなことを言っても、たとえば知りもしない芸能人を貶めるような、あるいは理解できないピカソの絵を褒めるような言葉の羅列になってしまうと思った。
「ルールはスーパーエキスパートルールでいいですか?」
 亜理紗の提案したルールは、M&Wのスタンダード・ルールの中ではもっとも難易度が高く、戦略性を要求されるものだ。オレは快諾した。
 デッキをセットすると、右腕に心地よい重みと緊張が加わる。

「――デュエル!」

 音声認識でデュエルディスクが起動し、ランダムに先攻プレイヤーを選ぶ。ややあって亜理紗のディスクがバイヴ振動し、ライフカウンターに「YOUR TURN」の文字が浮かび上がった。
「あたしの先攻ですね」
 刃物を扱う表情で、亜理紗は手札を五枚ドローした。眼が見えないというのに、その動きにはまったくよどみがなかった。
「ドロー。スタンバイフェイズ終了は、スタンバイって略してもいいですか?」
「あ、どうぞ」
 公式デュエルでもない限り、各フェイズの終了を宣言する必要はない。ほとんど意味のないスタンバイフェイズなどなおさらだ。よほど律儀な性格なのか、ひょっとしたら、公式大会の出場経験があるのかもしれない。
「一枚伏せて、エンドです」
「は!?」
「えっ!?」
 オレとアキラは同時に頓狂声をあげた。それもそのはず、亜理紗はフィールドにモンスターカードを出さないまま、ターンを渡してしまった。ボクシングで試合開始と同時にホールドアップするようなものだ。さあどうぞ、お好きに殴ってください。
 ――手札事故、か?
 初手に序盤では使えないカードばかりが揃ってしまうことを、そう呼ぶ。だが事故を装った罠という可能性もまた低くはない。わざと隙を見せ、踏み込んできたところにカウンターを食らわせる戦術だってある。カードゲームは騙しあいなのだ。
 手札を見下ろすと、いちばん右のトラップカードが眼を引いた。『聖なるバリア−ミラーフォース−』。相手が攻撃した瞬間、有無をいわせず攻撃モンスターを全滅させる、罠カードのなかではいっとう恐ろしいものだ。だが伏せカードはこれではない。少なくともオレなら切り札級のモンスターが進軍してくるまで、多少のライフポイントを犠牲にしてでも温存する。
 考えろ。自分に言い聞かせた。オレが亜理紗なら、なぜこの布陣を選ぶ? たとえば『ディメンション・ウォール』。たとえば『ダメージ・コンデンサー』。どちらもあえてダメージを受けることによって発動する罠だ。だが、この状況を説明するには足りない。あるいは本当に手札事故で、苦し紛れに魔法カードを伏せたのか?
「『魔導戦士ブレイカー』を召喚します」
 デュエルディスクに内蔵されたCCエンジンがカード画像をソリッドビジョン化し、500ミリペットボトルサイズの、赤銅色の鎧に身を固めた剣士がベッドの上に登場した。立体映像は調節しだいで2リットルペットボトルくらいになるが(それ以上も技術的には可能だが、悪用のおそれがあるので個人の使用は制限されている)オレはこのくらいのサイズが気に入っていた。
 ブレイカーの攻撃力は、レベル4モンスターとしては高めの1900。攻撃力を300下げる代わりに、一度だけ相手の魔法・罠カードを破壊する特殊能力を持つ。使えばノーリスクで攻撃できる。だが――
「ブレイカーでプレイヤーに直接攻撃します」
 せっかくのスリリングな状況。あっさりリスクを回避してしまっては面白くない。亜理紗のほうを窺った。その顔に浮かんでいたのは、驚愕――そして余裕。
「鋭いですね。ぜったいリバースカードを破壊すると思ってました」
 破顔し、高らかと伏せカードの名を告げる。
「『徴兵令』発動!」
 相手のデッキの一番上のカードを、それが通常召喚可能なモンスターなら、自分のしもべとして特殊召喚できる。それ以外なら相手の手札に加えるという、ギャンブル要素の強い罠カードである。ふつう、相手のデッキの一番上を確認できるカードと共に使われる。
 デッキのカードをめくった。引いたカードは――『ホルスの黒炎竜LV6』。
 スーパーエキスパートルールでは、レベル5以上のモンスターは一体、レベル7以上のモンスターは二体のモンスターを生贄(リリース)に捧げなければ召喚できない。だが『徴兵令』の効果にレベル制限はなかった。オレは『ホルス』のカードを彼女に渡した。
 竜でありながらその姿は鷹に酷似している。輝く金属の鱗で覆われた猛禽は、銀色の巨翼を広げて、赤銅色の戦士の行く手を阻んだ。
 黒炎竜は、攻撃力2300を誇るオレの主力モンスターだ。その鋼鉄のボディは、いっさいの魔法を受けつけない。攻撃をキャンセルし、『聖なるバリア−ミラーフォース−』をセットしてターンエンドを宣言した。少なくともアキラよりはレベルの高いデュエリストのようだ。難解なパズルを見つけたときのような高揚感に、しぜんと笑みがこぼれた。

 ターンが移ると亜理紗は場と手札を「聞き」比べ、
「クリッターを攻撃表示で召喚します」
 戦闘向きではないと一目でわかる、三つ目の毛ダルマが現れた。攻撃力は1000。
「それから、魔法カード『強制転移』を発動します」
「あ」
 『強制転移』は、それぞれのプレイヤーが自分のモンスターを一体ずつ選び、コントロールを交換するカード。オレの場にモンスターは一体しかないので、選択の余地はない。彼女のクリッターがオレのしもべに、魔導戦士が彼女の味方になる。
「ここでブレイカーの特殊能力を発動。攻撃力を300下げる代わりに、ミドリさんの伏せカードを破壊します」
 伏せておいた最強の罠カードが、あっさりと破砕された。
「バトルフェイズ。ホルスの黒炎竜でクリッターを攻撃。さらにブレイカーでダイレクトアタックします」
 輝く金属ドラゴンが炎を吐き、クリッターは灰となった。空になったフィールドを駆け抜け、魔導戦士がオレのライフカウンターに反逆の刃を突き立てる。
 LP(ライフポイント)が急降下し、残りわずか1100ポイントになった。0になればオレの負けだ。
「あたしの『クリッター』が破壊されたので、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加えます。『ミスティック・ソードマンLV2』」
 カード名を宣言すると、デュエルディスクが自動的にカードを選出した。選び出されたそれをオレに見せたあと、手札に加える。
「最後にカードを一枚伏せて、エンドです」
 スーパーエキスパートルールでは、一ターンに手札から出せる魔法・罠カードは一枚ずつ。このターンで亜理紗は魔法カード『強制転移』を使っているから、伏せたカードは罠カードということになる。
「あーらら、ミドリちゃんってば大ピンチ」アキラが茶々を入れる。心なしか喜んでいるような気がするのは、たぶん気のせいじゃない。
「うるせえ、黙ってろ」
 アキラを制した手を口元にやって、考える。
 LPの差に加え、亜理紗にはモンスターが二体(しかもオレの!)と罠カードが一枚。手札の『ミスティック・ソードマンLV2』は、裏守備モンスターを無条件に破壊する特殊能力を持つ。次のターン、ホルスを上回る攻撃力のカードを出せなければ、オレの負けだ。
 互いの手札は四枚。こちらのフィールドは空。だが反撃は可能だ。手札のうち、墓地からモンスターを呼び出す『早すぎた埋葬』と『リビングデッドの呼び声』は今のところ役に立たないが、相手のモンスターを奪う魔法カード『洗脳−ブレインコントロール』と、召喚するのに一体のリリースを必要とするレベル6モンスター『カイザーグライダー』がある。
 ――ホルスに『洗脳』は通じないが、ブレイカーを奪えば、生贄を確保できる。
 ドローフェイズ。新たに引いたカードは『氷帝メビウス』。カイザーグライダーと同じ6ツ星モンスターで、攻撃力も同じ2400。どちらも特殊能力を備えているが、より戦闘向きなのは後者だ。このターンで召喚すべきは――
「『洗脳』を発動。このターン、ブレイカーは再びオレのしもべになります」
 洗脳はコストとしてライフ400を必要とするため、LPは残り700。
「魔導戦士ブレイカーを生贄に――」
 リリースされた赤銅色の戦士が砕け散る。ファンタジー風に言うなら、魔導剣士の命と引き換えに場に力が満ち、上級モンスターを呼び出す道が通じる。
「『氷帝メビウス』召喚!」
 仮面で顔を隠した巨漢が、音もなく空から舞い降りてきた。静かな降臨とは裏腹に、その脚先が地面を叩いた瞬間、地に亀裂が走った。轟音と共に、裂け目から激流が噴き出す。水流はまっしぐらに亜理紗のフィールドを襲い、伏せていた『神の恵み』を押し流した。これがメビウスの特殊能力だ。アドバンス召喚されたとき、相手の場の魔法・罠カードを二枚まで破壊する。
「メビウスでホルスを攻撃します」
 仮面戦士が跳躍し、宙を舞う鋼鉄の竜に肩口から体当たりを食らわせる。接触面から火花が散り、続いて繰り出されたメビウスの豪腕が、ホルスの鋼鉄ボディを突き破った。形勢逆転だ。いまだLPに大きな差はあるものの、流れはこちらに傾いた。
 ――このターン、『リビングデッドの呼び声』を伏せるか?
 すでに『洗脳』を使っているため、いま伏せれば罠カードだと教えることになる。このゲームではわずかな情報の漏洩さえ命取りになる。だが、前のターンで亜理紗が『ミスティック・ソードマンLV2』を手札に加えたことが引っかかっていた。あの場合、オレだったら、『ならず者傭兵部隊』をサーチする。守備モンスターしか破壊できないソードマンと違い、自爆することで、いかなるモンスターも道連れにできるカードである。汎用性が高く、様々なデッキに採用される。
 ――それをしなかったということは、最初から『ならず者』がデッキに入ってないか、探す必要がない――つまり、既に手札にあるか。
 『リビングデッドの呼び声』は相手のターンでもモンスターを蘇生できるカード。伏せておけば、『ならず者』でメビウスを道連れにされたとしても、すぐさま復活させることができる。
 亜理紗を見た。楽しくて仕方ないといった顔で、オレの手を待っている。
「このままターン終了です」
 罠は温存することにした。勘でしかないが、『徴兵令』をデッキに入れていることといい、彼女のデッキは普通とは違う気がしたのだ。

「あたしのターンですね」ドローし、亜理紗は莞爾と笑った。「ミドリさん、改めてお礼を言わせてください。いまあたし、すっごくわくわくしてます。今まででいちばん楽しいデュエルだと断言できます。本当に――なんてお礼を言っていいのかわからないくらい」
「オレは……なにも」
 カードを持つ手が汗ばんできて、それ以上言えずに下を向いた。裏切り者の罪悪感が胸に残った。
 そうじゃないんだ、城ヶ崎さん。と告白できればどれだけ楽だっただろう。オレはデュエリストじゃないんだ。カードゲームは嫌いだし、本当は、こんな遊びに興じている人間も見下しているんだ。
 M&Wをやっている理由? 他にアキラを黙らせる方法が無かったから。オレが懸賞でデュエルディスクを手に入れたとたん、相手してくれしてくれとしつこいのなんの。これでデッキを組めとカードまでくれた。両親は「お兄ちゃんなんだから」といつもの決まり文句。オレに選択の余地はなかった。
 M&Wがオレにもたらした唯一のものは、昏(くら)い快感だった。デュエルを通したコミュニケーションなんてくそくらえ。公開情報から相手の状況を分析し、最良の一手を模索する思考の奔流に身を任せるのは、まるで透明人間になって悪戯を仕掛けるような、大きな声ではいえない悦びをともなった。ミニマックスの原理、囚人のジレンマ、プロスペクト理論――ゲームの中で人はどういう行動をとり、自分はどうすれば勝てるか。つまるところオレがこの40枚の厚紙に求めているのは、他人の心理を暴き、コントロールするような悪趣味の実践であり、オレは「独りで」デュエルしているに過ぎない。結果がどうあれ盤面に興じる楽しさこそ、デュエルの真の醍醐味であるとわかっていながら、オレの心は他人とデュエルすることを拒んでいる。その点で亜理紗とオレでは、芸術家の描く裸婦画と、健全な男子高校生がベッドの下に隠すモノくらい違うのだ。
 以前は違った。オレが中学に入りたての頃は、クラスでも多種多様のカードゲームが流行していて、積極的に輪に入ったものだった。自分が輪の中心になったことも少なくない。比較対象を同年代に限って言えば、実力のあるほうだったと思う。
 だがある日、不意にすべてが終焉した。
 亜理紗は守備モンスターを一体追加し、エンドを宣言した。
 守備表示で出されたモンスターは正体がわからない。だが、レベル4以下で2400以上の守備力を持つモンスターは、そう多くはないはずだ。
「オレのターン。ドロー」
 引いたのは『ゴブリン突撃部隊』。リリースなしで召喚できるレベル4モンスターとしては、かなり高い攻撃力2300を備えるカードだ。いったん攻撃すると一ターン眠りに入って弱点を露呈してしまうが、強力なことに変わりはない。
「『ゴブリン突撃部隊』を召喚して、守備モンスターに攻撃します」
 棍棒を手にした子鬼軍団が、次々と亜理紗の伏せカードに襲い掛かる。実体化したモンスターはというと――『リバイバルスライム』だった。守備力こそ500だが、倒されたときにLP500を与えれば、倒されても倒されても次のターンに蘇ってくる。しかし、彼女はスライムを再生させなかった。
 ゴブリンたちはスライムを叩き潰すと、ごろりと横になっていびきをかき始めた。
「さらにメビウスでダイレクトアタック」
 仮面戦士が手をかざすと、肘の辺りから螺旋を描きながら水の竜巻が発生し、亜理紗のライフカウンターを直撃した。「一枚伏せて、ターンエンド」
 亜理紗のターン。「カードを一枚伏せて、モンスターを守備表示です。エンド」
 オレの攻め手は確実に効いている。次のドローしだいでは、決着が付くだろう。

 次にオレが引いたカードは『サイクロン』だった。フィールド上の魔法・罠を一枚破壊できる。
 この状況で引きうる最高のカードだったにもかかわらず、訪れたのはほのかな落胆だった。サイクロンで伏せカードを破壊。ゴブリンを生贄にカイザーグライダーを召喚し、二体で攻撃すれば勝てる。しかし――
 勝てばデュエルは終わる。そのことを、惜しいと感じている自分がいた。楽しい夢を見た朝の、半覚醒のまどろみの中で感じる名残惜しさ。夢から覚めれば、オレはまたカードを仕舞いこんで鍵を掛けるだろう。ふたたびアキラのわがままの虫が目覚めるまで、もう日の目を見ることはあるまい。
 それでも、いつかは夢から覚めなくてはならないのだ。オレはサイクロンを発動させた。
「伏せカードを破壊します」
 亜理紗は――笑っていた。
 夢は、まだ終わらない。
「そうはいきません、伏せカードオープン!」
「よ……『予言』?」
 相手の手札を一枚選択し、攻撃力が2000より上か下かを選択する。当たった場合、そのカードを自分の手札に加えられる。成功率が低すぎるので、『徴兵令』と同じく単独で使われることはほとんどない。
 オレの手札は『カイザーグライダー』と『早すぎた埋葬』。成功する確率は25パーセント。亜理紗にとって分のいい賭けとはいい難い。
 しかも、攻撃力2000以上のモンスターは総じて上級モンスターであることが多い。そしてデッキを占める割合が最も少ないのも、上級モンスターなのだ。こちらの手を看破していない限り、亜理紗が選ぶのは――
「初めに言っておきますね。あたしは、攻撃力2000より上を選びます」
 玲瓏とした声で、亜理紗は宣言した。
「……理由を、訊いてもいいですか」
「リズム、というものが、あると思うんです。デッキには」独白するように言う。「癖、っていうのかな。寄せては返す波みたいに、攻めの後には守りがある。守りの後には攻めがある。デッキによってそのリズムは違うんです」
 分かりにくいですか? という表情を作る。だがオレはその先を理解していた。デッキのリズム、癖、流れ。そういったものを知るものだけに見える、デュエリストの境地。
 かつてのオレには、亜理紗と同じ景色が見えていた。

 ――あーあ、せっかく新しいデッキを組んだのに、やっぱ美作には勝てねえや。
 ――っかし、毎回毎回、どうやって手札を読んでるんだ?
 ――イカサマじゃねえのか?
 ――違うって。お前らのデッキは、構築が上手すぎるんだよ。常勝できるように作られたデッキは、毎回同じ勝利パターンを踏もうとするだろ? だから結論から逆算することで、消去法で手札が読める。
 ――まぁた始まった。美作先生のデュエル講義。
 ――はいはい代われ代われ。次、俺と勝負。

 亜理紗は続ける。
「普通のデッキのリズムだと、攻守のバランスが取れているから、小波しか発生しないんです。でもミドリさんのデッキは……間違っていたら笑ってください、あたしの直感は、大津波タイプだと告げています。揺れ幅がすごく大きいから、いったん攻撃に入ったら、どんどん上級モンスターが出てくる。おそらく、今も手札に」
 めしいたはずの眼は、少しだけ『カイザーグライダー』に偏っているように見えた。

 ――なあ、美作。本当は手札見えてるんだろう? 白状しろよ。
 ――だから、お前のデッキのバランスは良すぎるんだってば。カードのセレクトが無難すぎるっていうか、攻め手と守り手がきちんとしすぎ。その流れさえ掴んでしまえば、だいたいのデッキ内容が分かっちゃうんだよ。デッキが分かれば状況から手札が推測できるだろ? 単純なことじゃないか。
 ――わかんねえよ。
 ――なんていうかなあ、たとえば、ハ長調って言えば曲全体のイメージが見えるだろ? そこから出だしの音とか、何拍子かとか考え合わせていけば、ああこれはあの曲のアレンジだと分かる。とすれば次の小節はあんなリズムが来るな、と推測できる。この世に存在するデッキのパターンなんて、ごくわずかだから。
 ――なんかさあそれ。いかさまと変わらなくね?

「『予言』の効果発動です。あたしから見て、右のカードを選択します」
 選択されたのは、モンスターカード。
「その手札は上級モンスター、つまり――」

 ――うわ、マジでひっかかりやがった。痛そー。
 ――おいおい、頭打ってたらまずいぞ。階段の前はやめとけっつったのに。
 ――いいっていいって。こいつ、イカサマで手札を覗きやがるから、天罰だ。
 ――それもそうだな。イカサマしてるからこういう目に遭うんだ。
 ――そうそう。ひゃははははは。
 ――きゃははははは。

「2000より、上だと思います」

 その週はずっと秋晴れだった。誰かが意図的に、階段の前に水を撒いたことは明白だった。砕け散っていく意識の中で、最後に聞いた罵倒が耳に残った。
 二度とデュエリストなんて名乗るなよ、いかさま野郎。
 学校は「事故」として犯人を追及しようとはしなかったし、オレもそんなことは望まなかった。退院したあと、全財産をカードにつぎ込んで、中学生が参加できる中では最も規模の大きい大会に参加した。かつてのカードゲーム仲間がそこにいた。いざデュエルになっても、互いに挨拶はなかった。勝ち進めるところまで勝ち進んだあと、全てのカードを売り払った。売れなかったカードは細切れになるまで破って捨てた。
 そうしてオレは、何を手に入れたのだろう。
「――おい、ミドリ」
「――ミドリさん?」
 不安げな声で我に返った。
「あ、ごめん。『カイザーグライダー』、で正解。すごいね」
 亜理紗ははにかんだ。
「たまたまです。たまたま、運がよかっただけ……」
 もし、を考える。もし亜理紗と出会うのが、あと二年早かったら。
 今までを後悔しているわけじゃない。しかし――。
「そろそろ本気を出します。このデュエル、勝つのはオレです」
「望むところです。あたしも本気でいきますね」
「なら、ここからが本当のデュエルです――メビウスで守備モンスターに攻撃!」
「残念でした。あたしの守備モンスターは、『素早いモモンガ』です」
 げ、と思わず悲鳴が洩れた。守備力は100しかないが、二つの特殊能力を備えている。一つは戦闘で破壊された時、プレイヤーのLPを500ポイント回復する能力。もう一つは死に際に雄叫びを上げ、デッキから仲間を呼ぶ能力。
 メビウスがモモンガを押し潰し、亜理紗のLPが2000に上昇した。
「特殊能力発動。デッキから『素早いモモンガ』を一体、守備表示でセットします」
 デッキから出せるモモンガの数に制限は無いが、亜理紗は一体しか呼び出さなかった。手札に最後の一枚が眠っているのか、あるいはわざと一体しか出さず、オレの反応を窺っているのか。場には『リビングデッドの呼び声』が伏せてある。
 ここでホルスを蘇生して攻撃し、もし『モモンガ』がデッキに残っていた場合、貴重な蘇生系カードを無駄遣いした上、無為に相手のLPを増やす結果となる。逆に『モモンガ』が手札にあった場合でも、次のターンで『カイザーグライダー』を召喚されないとは限らない。モモンガでなくとも生け贄モンスターを確保する方法はいくらでもあるからだ。
「ターン、終了!」
「あたしのターン。モモンガを生贄に、『カイザーグライダー』を召喚します」
 音のない爆発。光輪の中心に、黄金色の竜が浮いていた。同じドラゴンでも鷹似のホルスとは大きく違い、こちらはウサギのような面構えをしている。
「氷帝メビウスに、攻撃」
 再び跳躍したメビウスを、カイザーグライダーが迎え撃つ。上から黄金竜、下から仮面戦士の一騎打ち。攻撃力は互角。ルールでは、相打ちで二体とも消滅するはずだった。
 黄金竜の口腔から赤光が放たれる。正面からまともに食らったメビウスは、カイザーグライダーに触れることもかなわず、地面に叩きつけられた。大きくバウンドして、空中で砕け散った。カイザーグライダーは空中からの先制攻撃ができるため、攻撃力が同じモンスターとの戦闘では破壊されないのだ。
「一枚伏せて、ターン終了です」
 勝負の流れは再び亜理紗に傾き始めていた。彼女には手札が三枚ある上に、場には強力モンスターが控え、LPにも余裕がある。対するオレは、全てにおいて崖っぷち。手札には『早すぎた埋葬』が一枚だけ。たった一つのミスが即、敗北に繋がる窮地だった。

 墓地にカイザーグライダーを倒せるモンスターはない。次のターンで守備モンスターを引けなければ、それでジ・エンド。
 かぶりを振って悪い予感を追い出し、デッキに手を伸ばした。ドロー。
 ゴブリンたちが眼を覚まし、けだるそうにあくびしながら昆棒を手にする。
「魔法カード『強欲な壺』を発動します。デッキから二枚ドロー」
「そのドローに対し、永続トラップカードを発動します。『便乗』。ミドリさんがドローフェイズ以外でドローするたび、あたしも二枚引くことができます」
 亜理紗の手札が五枚に増えるのを見ながら、内心で運の悪さを呪った。オレのデッキに『便乗』の発動条件を満たすカードは『強欲な壺』と『リロード』のたった二枚。前のターンで『便乗』を伏せていなければ、無意味なカードだったはずなのに。
 デッキから二枚引く。これで手札は三枚。引いたカードは、『光の護封剣』と『強制脱出装置』。前者は相手モンスターの動きを三ターン封じる魔法カード。後者は、モンスター一体を持ち主の手札に戻す罠カードだ。
「一枚カードを伏せ、ゴブリンを攻撃表示に変更します。ターン終了」
 亜理紗のターン。視界のハンディをまるで感じさせない慣れた手つきで彼女はターンを進めた。
「罠カードですか……たぶん通らないでしょうけど、カイザーグライダーでゴブリンに攻撃します」
「ご明察。罠カード『強制脱出装置』を発動します。カイザーグライダーはオレの手札に」
「バトルフェイズを終了します。モンスターを守備表示でセット。カードを二枚伏せ、エンド」
 魔法カードと罠カードだ。
「オレのターン。ドロー」引いたのは、『迅雷の魔王−スカル・デーモン』。デッキ中最強の攻撃力2500を誇るカードだが、デメリットもある。「『ゴブリン突撃部隊』で攻撃」
「『素早いモモンガ』が破壊されたので、500ライフポイントを回復します」
 ゴブリンに殴られながらモモンガは雄叫びを上げたが、三枚目であったため、新たなモモンガが召喚されることはなかった。
「ゴブリンを生贄に、『カイザーグライダー』を召喚してエンドです」
 手札は互いに三枚。オレのフィールドには黄金竜と、墓地からモンスターを呼び出す『リビングデッドの呼び声』がある。いっぽう彼女には魔法と罠、二枚の伏せカードと『便乗』。場の優劣は拮抗している。しかし、肝心のLPが700:2500と大きく開いていた。長引けばオレに不利。
 アキラは口を一文字にして成り行きを見守っている。
「あたしのターンは、モンスターを守備表示で出してエンドです」
「エンドフェイズで罠カードを発動します。『リビングデッドの呼び声』。墓地より『ホルスの黒炎竜LV6』を蘇生します」
 ――次のターンでホルスを生贄にスカルデーモンを召喚し、一気に攻める!
 もし亜理紗が罠を張っていたとしても、『光の護封剣』を発動させれば、次のターンでの反撃を封じることができる。多少の無理も可能だからこその、粗い作戦だった。亜理紗が言う、「デッキに津波が眠っている」とは、オレのこういう性格に起因しているのかもしれない。
「いいえ。そう簡単に、「津波」は起こさせませんよ。あたしもここで罠カードを発動します」
 亜理紗はこちらの思考を見透かしたようなことを言って、二枚の伏せカードのうち一枚を反転させる。表になったカードを見て、オレは眼をみはった。
「『光の封札剣』!?」
 相手の手札を一枚抜き出し、三ターンの間ゲームから取り除くカードだ。これも運に左右される割合が多い。しかし――
 ――なんなんだ、このタイミングのよさは……?
 この状況でスカルデーモンを封印されたら、たとえホルスとカイザーグライダーの連続攻撃が成功しても、LPが100ポイント残ってしまう。オレの手札は『光の護封剣』『スカルデーモン』『早すぎた埋葬』の三枚。スカルデーモンが封印される確率は三分の一。『徴兵令』よりは低いが、『予言』よりは高い。もしこれが成功すれば、『徴兵令』から数えて、都合三回も亜理紗は攻め手を封じたことになる。
 オレは目を閉じて、亜理紗の審判を待った。
 長い沈黙が降りる。
「……いちばん左のカードを選びます。あたしから見て、という意味ですけど」
 眼を開ける。はたして彼女の選んだカードは――

   ***

 ――同時刻。駅前カラオケ店『sHARP EdgE』にて。
「野々村ぁ、引き抜きは困るんだけど」
「何のことだい?」
「とぼけんなって。ネタはあがってんの。アンタ、まだあいつのこと諦めてないんだって?」
「フラれると燃える性分なんで」
「やめてよ。うちの部にいる一年で、かろうじてユーレーじゃないのっていえばあいつだけだしさ。いなくなったらなったでいろいろと困るのよ」
「どの部活に入るかは、彼の自由だろう?」
「もちろん、あいつの意思は尊重するつもり。だけど、アンタのずるいやり方は見過ごせない。誰でも入部できて、初心者でもうまくやっていけるみたいな口調で誘うなんて」
「うちは初心者だろうと断ったりはしないさ。“入部試験”さえ突破してくれればね」
「無理に決まってるじゃない。どうせあの二人が辞めた後の、頭数あわせに誘ってるんだろうけど、だったらもっと部員の余ってる部で……」
「頭数あわせ? はは、冗談を言ってくれる。あの天才どもが抜けたのは確かに痛いが、彼ならその穴を補って余りある存在になれるはずだ」
「冗談にしては笑えないね」
「ぼくがMTGを辞めた理由、話したっけ?」
「例の全国大会でベスト8に残った時の自慢話なら、二年も前から耳にタコができっぱなし」
「自慢話なんてとんでもない。ベスト4決定戦で負けたぼくは、思ったんだ。年下に負けたぼくに、もうカードを握る資格はないと」
「で、あっさり宗旨替えして、今じゃ立派なM&W部の部長さんってわけだ」
「若かったんだよ。それに悔しかった。そのとき負けた奴の名前と顔が、今でも忘れられないほどにね。……そいつの名前は美作ミドリ。当時14歳。中学生以下という年齢制限があったとはいえ、その全国大会の、優勝者だ」
「……冗談だろ? まさか、あいつが?」
「信じる信じないは任せるよ。でも、彼の勧誘は続けさせてもらうんで、よろしく」

   ***

 選んだのは――『早すぎた埋葬』。

 快哉を叫んだ。「オレのターン! ドロー。『ホルスの黒炎竜』を生贄に――」
 まだその姿を見せぬうちから、暗雲が立ち込め、場の淀みが増す。遥か彼方より聞こえてくる雷鳴。
 遠雷を背に、オレは最強モンスターの名を呼んだ。
「『迅雷の魔王−スカル・デーモン』召喚!」

 幾筋もの雷光と共に、闇の魔王が現出する。

「ええっ!」亜理紗が声を大にして悲鳴を上げた。「なんで……っ!?」
「今回はオレのほうがついてたみたいですね。『カイザーグライダー』で、守備モンスターを攻撃!」
「そ、速攻魔法を発動します。『月の書』!」
 通常、魔法カードは自分のターンでしか発動できない。M&Wの設定上、モンスター召喚を含む魔法は長い詠唱が必要とされているからだ。しかし例外もある。速攻魔法と呼ばれる魔法カードは、伏せることで地から魔力を吸い取り、相手ターンでも発動が可能である。
 『月の書』は夜そのものを呼び出し、モンスター一体を闇に封じ込める。カイザーグライダーは闇に塗りつぶされ、裏守備表示になって沈黙した。
「なら、スカルデーモンで守備モンスターを攻撃!」
 スカルデーモンの攻撃力はカイザーグライダーより高いが、亜理紗が『月の書』をスカルデーモンに放たなかったのは、デーモンの特殊能力が関係している。雷を操る悪魔王はその威力で自らを守り、自分が対象となる効果の成功率を二分の一に減少させる。その能力ゆえに、コントローラーは自分のスタンバイフェイズが来るたび250ポイントのライフを与えなくてはならないのだが。
 スカルデーモンが手をかざすと、落雷が守備モンスターを直撃した。
「ターン終了です」
 亜理紗は怪訝な顔をした。
「なにも、伏せないんですね?」
「いい手がなくて」
「……そうですか」
 もちろん嘘だ。亜理紗の手札に『ミスティック・ソードマンLV2』があることを忘れたわけではなかったし、『光の護封剣』を発動させれば攻撃を防ぐこともできた。カイザーグライダーを囮にして亜理紗のLPを削るため、わざと場を明け渡したのだ。
「あたしのターン。『ミスティック・ソードマンLV2』を召喚。裏守備表示のカイザーグライダーに攻撃します」
 光と共に兜を被った剣士が現れ、正眼に構える。と、消えるような俊足でカイザーグライダーに肉薄し、真っ二つに斬り捨てた。ソードマンの攻撃力はわずか900に対し、カイザーグライダーの守備力は2200。しかしその剣は、裏守備のモンスターなら無条件で破壊できる。カイザーグライダーは先制攻撃ともうひとつ、戦闘で破壊されたとき、モンスターを一枚手札に戻す効果もあったが、ソードマンは切り捨てたモンスターの特殊能力を無効化する能力を持っていた。
「バトルフェイズを終了します。ここで魔法カード『強制転移』を発動。ソードマンとスカルデーモンのコントロールが入れ替わります」
 やられた。序盤でブレイカーとクリッターを入れ替えられた悪夢が再現される。強制転移はプレイヤーに働きかけるため、スカルデーモンの特殊能力は発動しない。オレはなすすべもなくデッキのエースカードを奪われた。
「一枚伏せて、あたしのターンは終了です」
 伏せたのは罠カード。
 オレのターン。ドローカードは『墓守の偵察者』。
「モンスターを守備表示でセット。さらにミスティック・ソードマンも守備表示に変更。手札より『光の護封剣』を発動して、エンドします」

 光剣が亜理紗のフィールドに降り注ぎ、スカルデーモンの動きを封じる。互いの手札は一枚。互いにカードを出しつくしてしまっていた。護封剣が効いているあいだに体制を立て直したいところだ。
「あたしのターン。スカル・デーモンのコストを払って、スタンバイ。続いて『サイクロン』発動です。対象は、『光の護封剣』」
「!」
 暴風が亜理紗のフィールドを襲い、光の剣が粉々に砕かれた。
「スカルデーモンでソードマンに攻撃。最後の手札を伏せて、エンドです」
 彼女の場には二枚の罠カード。オレの場には一体の守備モンスター。
「ミドリちゃんぴーんち」とアキラ。
 それには答えず、カードをドロー。思わず笑みがこぼれた。
「守備モンスターを反転召喚します。『墓守の偵察者』が表になったので、特殊能力発動」
 偵察者が笛を吹いたとき、デッキから名前に『墓守の』が付いた攻撃力1500以下のモンスターを一体、特殊召喚することができる。
「特殊召喚するモンスターは、『墓守の呪術師』。攻撃表示」
「呪術師!? ……しかも、攻撃表示ですか?」
 亜理紗は小さく驚きの声を上げた。予想通りの反応が嬉しかった。『墓守の呪術師』はレベル3、攻撃力、守備力ともにわずか800の弱小モンスターである。特殊能力も、もっとすごいモンスターならいくらでもいる。普通の――いや、まともな奴ならデッキに入れない。ましてや攻撃表示で場に出すなど、愚の骨頂だろう。
 呪術師は場に出た瞬間、その能力を発揮する。呪術師が胸の前で印を組むと、彼の持っていた杖が宙に浮かびあがり、亜理紗のライフカウンターに突き刺さってはじけた。
 亜理紗のLPは250減って2000になる。
 彼女は納得したように唇の端を吊り上げた。
「……そうか。ミドリさんも持っているんですね? あの魔法カードを」
 微笑み返して、手札から一枚抜き出す。「正解です――『強制転移』を発動! 呪術師とスカルデーモンを交換してもらいます」
「それなら、伏せカード発動。『徴兵令』!」
「なっ!」
 この局面で新たにモンスターを召喚されれば、そのモンスターと呪術師が交換される。次のターン、スカルデーモンで攻撃表示の偵察者を攻撃されたら――オレの負けだ。
 おそるおそる、デッキのカードをめくった。

 ――『メテオ・ストライク』。

「――ざんねん。魔法カードでした」
 カードを裏返す。亜理紗には「見え」ないが、天使の輪っかが読みあげてくれるはずだ。このカードを装備したモンスターが守備モンスターを攻撃したとき、攻撃力が守備力を上回っていれば、そのぶんだけダメージとして与えることができる。
 亜理紗の顔が心なしか強張った。
 『メテオ・ストライク』を手札に加え、スカルデーモンを戻す。呪術師は彼女のしもべとなった。
「バトルフェイズ。スカルデーモンで呪術師に攻撃!」
 蒼い落雷が、呪術師を見る影もないほど木っ端微塵にする。呪術師は攻撃表示だったため、亜理紗のLPは残り300。彼女を守るモンスターはいない。あと一体、偵察者の攻撃が通れば、勝負は決まりだ。

 オレは高らかに勝利の攻撃宣言を放った。
「偵察者でプレイヤーにダイレクトアタック!」
「罠カード発動! 『リビングデッドの呼び声』!」
「――! まさか!」
 もし『強制転移』に割り込んで『徴兵令』と同時に発動させていれば、スカルデーモンを奪われることはなかったはずだ。よほど『徴兵令』に自信があったのだろうか。
「攻撃表示でクリッターを蘇生です」
「……攻撃は続行!」
 偵察者の攻撃力は1200。クリッターの攻撃力を200上回っている。偵察者のローキックが、復活したばかりの三つ目毛玉をサッカーボールのように吹っ飛ばした。あわれクリッター。
 亜理紗のライフはわずか100ポイント。手札はない。唯一の望みは次のターンで引くカードと、クリッターの特殊能力で手札に呼び込むモンスターだ。
 この状況でサーチすべきカードは、理想を言えば守備力2500以上のモンスター。もっともそんなカード、デッキに入れている人間のほうが珍しいが。
 たとえ守備力2500のモンスターが入っていたとしても、ゲームは既に「詰み」に入っている。攻撃力の高いスカルデーモンは囮だ。次のターンで『光の封札剣』の効果が切れ、『早すぎた埋葬』が手札に戻る。墓地の『呪術師』を蘇生すれば、250ポイントの効果ダメージが彼女を襲う。オレの勝ちは確実だ。
「クリッターの効果で、『魂を削る死霊』を手札に加えます」
「……?」
 想定の埒外のカードだった。『魂を削る死霊』。功・守ともに数値は低いが、霊気の集合体であるため、戦闘では破壊されない。スカルデーモンから身を守るという目的は間違っていないが、オレには『メテオ・ストライク』があるのだ。守備力を貫通してプレイヤーにダメージを与える装備カード。彼女も十分に承知しているはず。
「……二枚伏せて、オレのターンは終了です」
 万全を期すため、『昇天の角笛』と『メテオ・ストライク』を伏せ、手札はなくなった。LPは残り700。次のターン、亜理紗がどんな攻撃力のモンスターを出してきても、『昇天の角笛』で召喚を無効にすることができる。
 彼女の手札は死霊一枚のみ。伏せカードはない。オレの勝ちだ。
「あたしのターンですね。ドロー。スタンバイ」
 オレとアキラは息を止めて亜理紗の一挙手一投足を見守る。
「『強欲な壺』発動です。デッキから二枚ドローします」
 亜理紗はドローした2枚のカードを見比べて、
「一枚伏せて、モンスターを守備表示。エンドです」
 こちらをまっすぐに見据えた。盲者とは思えない、鋭い眼光だった。
「オレのターン! スカルデーモンのコスト250ポイントを支払います。さらに光の封札剣の効果が切れ、封印されていたカードが手札に戻ります」
 手札に戻った『早すぎた埋葬』の発動コストは400。LPは450。「手札より『早すぎた埋葬』発動――墓地から『墓守の呪術師』を蘇生します」
 上半身だけ土から這い出した呪術師が印を組む。
「オレの勝ちですね」
 亜里沙も微笑んでいた。敗者が勝者に送る、賞賛の笑み――ではなかった。
「そうはいきません。カウンター罠カード『方舟の選別』です。既にフィールド上に出ているモンスターと同じ種族のモンスターの召喚を無効にします」
 フィールドには、魔法使い族である『偵察者』がいるため、同じく魔法使い族である『呪術師』の特殊召喚はキャンセルされる。呪術師は煙のように消え去った。
「だったら、『メテオ・ストライク』をスカルデーモンに装備。裏守備表示の『魂を削る死霊』に攻撃します!」
 スカルデーモンの攻撃力2500に対し、『死霊』の守備力はわずか200。その差2300が亜理紗を襲い、今度こそオレの勝ちだ。
 亜理紗の顔を窺う。その口角が、つつつ、と上がった。
「いいえ。『魂を削る死霊』は、ここにあります」
 笑顔で最後の手札を裏返す。それは確かに『魂を削る死霊』だった。
「――じゃあ、場の守備モンスターは?」
「『死霊』は囮だったんです。『メテオ・ストライク』を装備したスカルデーモンの攻撃を誘う為の。もっとも、このカードを引けるかどうかは賭けだったんですけど」
 ゆっくりと、守備モンスターが表になる――『DHERO ディフェンドガイ』。その名の通り、レベル4モンスターとしてはおそらく最高の硬さを誇る。その守備力は、2700。
「ってことは……!」とオレ。
「まさか……!」とアキラ。
「そう。スカルデーモンの攻撃は跳ね返され、その差200ダメージが行く先は――」
 続きを言う代わりにこちらを指した。落雷が跳ね返り、右腕のライフカウンターを直撃する。50引く200は――考える必要はなかった。
「あたしの勝ち、ですね」
 亜理紗がにっこり笑った。オレの負けだ。しかし、心は妙に弾んでいた。
 オレは全力で走りきったのだ。悔いがあろうはずがない。
「負けたああっ」
 天井を仰ぎ、病院だということを忘れて叫んだ。
「すげえ! 城ヶ崎さん、強えええっ」
「そんなことないです。最後のターンで、『方舟の選別』と『ディフェンドガイ』のどっちかを引けなかったら、負けていました。勝てたのは運ですよ」
 謙遜する亜理紗は、斜陽を受けてきらきら輝いていた。ちらりと覗いた皓い歯に、心臓が早鐘を打ち始める。
「それを引けるデュエリストが、真のデュエリストなんですよ」
 本心だった。亜理紗は再びはにかんだ。写真にして飾りたくなるような笑顔だった。
「ありがとう、ミドリさん」

 それから面会時間が終わるまで、三人でデュエルを楽しんだ。ほとんどオレとアキラが交互に彼女とデュエルしたが(オレは善戦したものの、全てギリギリで負けた)、時にはオレとアキラが戦い、亜理紗が観戦することもあった(もちろん、オレは全勝した)。アキラは何度か彼女に勝ったが、おそらく彼女が花を持たせたのだろう。負け惜しみではない。オレのときとは違い、彼女は伏せカードをほとんど使わなかったからだ。
 去り際、もしよかったらまた来てください、と言う彼女にオレは、ええぜひ、絶対に、むしろ毎日でも、と力を込めて言い、苦笑された。
「でも、そうしてくれたら、嬉しいな」

 しばらく、早鐘は止みそうになかった。



 ☆アトガキ☆

 はじめまして。プラバンと申します。作者です。
 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

 本作『X ―エックス―』は、既読の方はご存知の通り、高橋和希氏の『遊☆戯☆王』を題材とした二次小説です。
 作者にとって、『心理戦』と『逆転劇』をテーマに、どんなエンターテイメントができるのか、という挑戦でもあります。
 デュエル以外の要素も多分に含んでいますが、そこを含めて楽しんでいただけたら、これ以上の幸せはありません。

 さて、第一話なので、ちょっと設定の話を。このお話は二次創作なので、基本的に原作漫画(アニメでもRでもなく)と同じ世界観です。時間軸は原作終了の三年後くらいかな、と適当に考えております。デュエルディスクはさらに進化し、ソリッドビジョンもずっと綺麗でなめらかになってます(見えないけど)。
 また、M&Wの創造者、ペガサスは原作において「消息不明」でしたが、エックスの世界では故人となっています。

 デュエルの話。登場するカードは基本的にOCGのものですが、OCGって何? という方でも楽しめるように、OCGプレイヤーの方々にしてみれば「なにをいまさら」な解説をつけさせていただきました。なお、一部の例外を除き、ライフコスト・効果ダメージ・回復効果が本来の半分の数値になっています(初期ライフ4000のため)。

 使用されるルールはスーパーエキスパートルール(原作のバトル・シティ編のルール)ですが、この辺の話はまた別の機会に。

 なおこの小説には、OCGとは一部効果の異なるカードが登場します。(以下に本来の効果を記述)OCGプレイヤーの方々は、どうか誤解のないようお願いします。

・『方舟の選別』(『早すぎた埋葬』などでチェーンに乗った特殊召喚は無効にできない)
・『便乗』(発動と同時にドローできない)
・『魔導戦士ブレイカー』(もともとの攻撃力は1600)
・『ミスティック・ソードマンLV2』(カイザーグライダーの効果は墓地で発動するため、無効にできない)

 それでは、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 次回は、変態が登場します。


※ リリース・アドバンス召喚など用語の変化に伴い、一部改訂。ただしこの話はあくまで原作準拠なので、完全な乗り換えはありません。生け贄・生け贄召喚の代名詞として使っていこうと思います。

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